見通し距離計算ツール — 電波水平線と地球のふくらみ
各アンテナの電波水平線、2本のマスト間の最大見通し距離、経路上の任意の点での地球のふくらみと第1フレネルゾーン半径、そこで回線に必要なクリアランスを、選んだk係数の滑らかな地球で計算します。
公式
参考: ITU-R P.526-15, Eqs. (2), (21) and (22); ITU-R P.530-17, §2.2.2; ITU-R P.834-9, §2
仕組み
2つのアンテナが互いを見通せるのは、地表が間に入るまでです。電波は完全にまっすぐには進みません。大気の屈折率は高さとともに下がるため、電波は地面の方へ緩やかに曲げられます。これを扱う標準的な方法は、電波を直線のまま扱い、代わりに地球を等価半径 ( km)まで大きくすることです。標準大気では です(ITU-R P.834-9)。 は屈折のない幾何学的な場合で、 が1より小さい準屈折では、地球がより大きく湾曲して見えます。
電波水平線と見通し距離
高さ のアンテナからは、滑らかな地球を電波水平線まで見通せます。2つのアンテナは、経路長がそれぞれの電波水平線距離の和より短い間、互いを見通せます(ITU-R P.526-15、式21):
高さ10 mのアンテナの電波水平線は、 で 13.03 km です。高さ30 mと10 mのアンテナは、35.61 km まで互いを見通せます。
地球のふくらみ
見通しがあるだけでは不十分で、電波の周囲にも空間が必要です。長さ の経路上で一端から 、他端から の点では、地球はアンテナ設置点を結ぶ直線の弦より地球のふくらみの分だけ盛り上がっています。また、第1フレネルゾーンの半径は次のとおりです(ITU-R P.526-15、式2):
50 kmの経路の中央では、 のとき地球のふくらみは 36.79 m です。
クリアランス
すべての障害物に対して第1フレネルゾーンの60%のクリアランスを確保した電波は、実質的に自由空間と同じように伝搬します。ITU-R P.530-17 の2.2.2節は、中央値の (既定値は4/3)で最も高い障害物の上に 1.0 F1、最悪月の99.9%で超過される低い で 0.0〜0.6 F1 のクリアランスを求めています。計算ツールは、選んだ点について、平らな基準面の上で直線の電波が必要とするクリアランス 、その点での滑らかな地球からの電波の高さ(ITU-R P.526-15、式22)、およびその点で経路が許容できる最も高い障害物を求めます:
適用範囲
地球は経路全体で1つの をもつ滑らかな球とし、地形、建物、植生、ダクトはモデル化していません。幾何は P.526-15 が用いる小角度近似の形で、水平から約5°以内の経路で成り立ちます(4.4節)。また、球面大地の方法は10 MHz 以上で適用されます(3.2節)。どちらかの範囲を外れると、結果は警告付きで表示されます。経路のどちらかの端より外側の点はエラーになります。
計算例
問題: 6 GHz の対向リンクが、開けた平坦な地面の上で高さ40 mと30 mのマストの間30 kmを結びます。経路の中央で地球をクリアしているか、またその地点でどれだけの高さの障害物まで許容できるかを求めます。
ステップ1 - k = 4/3 での等価地球半径: a_e = 4/3 × 6371 km = 8494.7 km
ステップ2 - 見通し: d_h1 = √(2 × 8494667 × 40) = 26.07 km d_h2 = √(2 × 8494667 × 30) = 22.58 km d_los = 48.64 km なので、30 kmの経路は見通し内にあります。
ステップ3 - 経路中央での地球のふくらみ: b = 15000 × 15000 / (2 × 8494667) = 13.24 m
ステップ4 - 第1フレネルゾーン: λ = 299792458 / 6e9 = 0.04997 m r_1 = √(0.04997 × 15000 × 15000 / 30000) = 19.36 m
ステップ5 - 0.6 F1 に必要なクリアランス: b + 0.6 r_1 = 13.24 + 11.62 = 24.86 m
ステップ6 - 電波が実際にもつ高さ: h = (40 + 30)/2 − 13.24 = 21.76 m(滑らかな地球からの高さ) 経路中央で許容できる最も高い障害物: 21.76 − 11.62 = 10.14 m
ステップ7 - ITU-R P.530-17 による確認: k = 4/3、1.0 F1 では、障害物の許容高さは 2.40 m に下がります。 k = 2/3、0.3 F1 では、地球のふくらみが2倍の 26.49 m になり、許容高さは 2.71 m です。
滑らかな地球だけならクリアしますが、P.530 の2つの条件のうち厳しい方では、経路中央の樹木や建物に 2.4 m しか余裕が残りません。そこに何かがあるなら、マストを高くする必要があります。
実践的なヒント
- ✓クリアランスは経路中央だけでなく、最も高い障害物の位置で評価してください。地球のふくらみは経路中央で最大ですが、障害物は別の場所にあるかもしれません。
- ✓ITU-R P.530 と同様に、同じ経路を k = 4/3・1.0 F1 と、低い k・0.3 F1 で計算し、厳しい方に合わせて設計してください。
- ✓低い方のアンテナを上げる方が、両方を上げるより安上がりです。ある点での電波の高さは、近い方のアンテナの高さに大きく重み付けされるからです。
- ✓任意の周波数でフレネルゾーンだけを求めたい場合は、フレネルゾーン計算ツールで半径と60%クリアランスを直接得られます。
よくある間違い
- ✗幾何学的な見通しだけを確認すること。電波水平線の内側の経路でも、地球や障害物が第1フレネルゾーンに入り込めば、回折で何デシベルも失うことがあります。
- ✗k = 4/3 だけを使うこと。準屈折の条件では、時間率はわずかですが k が 2/3 以下まで下がり、地球のふくらみが2倍になります。ITU-R P.530 は、中央値の k と低い k の両方でクリアランスを計画します。
- ✗地球のふくらみを障害物の高さに加え、さらに電波の高さからも差し引くこと。ふくらみは1回だけ数えます。地形断面をその分持ち上げるか、電波をその分下げるか、どちらか一方です。
- ✗一方のアンテナは海抜高、もう一方は地上高というように混在させること。両方のアンテナ高と障害物の高さは、すべて同じ基準面から測る必要があります。
よくある質問
方法論と参考文献
参考文献
- Propagation by diffraction — Recommendation ITU-R P.526-15 (10/2019), §2.1 Eq. (2), §3.2 Eqs. (21)–(22), §4.4 — Fresnel radius, line-of-sight distance, ray clearance, a_e = k × 6371 km
- Propagation data and prediction methods required for the design of terrestrial line-of-sight systems — Recommendation ITU-R P.530-17 (12/2017), §2.2.2 — planning criteria for path clearance
- Effects of tropospheric refraction on radiowave propagation — Recommendation ITU-R P.834-9 (12/2017), §2 — effective Earth radius, k = 4/3
The horizon, line-of-sight and bulge figures are P.526-15's own equations; as k grows the bulge falls to zero and the clearance reduces to the flat-Earth chord.
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