円形導波管計算ツール — 遮断周波数、TE11モードとTM01モード
円形導波管の任意のTEモード・TMモードの遮断周波数、TE₁₁とTM₀₁の遮断周波数の間の単一モード帯域を求めます。遮断周波数より上では管内波長、位相定数、位相速度と群速度、波動インピーダンス、導体損と誘電体損を、下ではエバネッセント減衰を計算します。
公式
参考: Pozar, Microwave Engineering, 4th ed. (2012), §3.4, Tables 3.3–3.5, Eqs. (3.127)–(3.140); NIST DLMF §10.21
仕組み
円形導波管は、半径で決まる遮断周波数より高い周波数のマイクロ波を伝送する中空の金属管です。その電磁界はTE(横電界)モードまたはTM(横磁界)モードを形成し、それぞれの形はベッセル関数で決まります。各モードは、それぞれの遮断周波数より高い周波数でのみ伝搬します:
ここで、 は内半径、 は充填材の比誘電率、 はベッセル関数の零点です。TEモードでは の 番目の零点 、TMモードでは の 番目の零点 です(Pozar『Microwave Engineering』第4版、3.4節)。添字 は円周方向の電磁界の変化の数を、 は半径方向の変化の数を表します。計算ツールは、NIST Digital Library of Mathematical Functions の10.21節の表のとおり、零点を小数点以下10桁まで保持しています。
単一モード帯域
基本モードは のTE₁₁で、次のモードは のTM₀₁です。したがって、導波管が単一モードで伝送できるのは2つの遮断周波数の間だけで、その帯域は半径や充填材によらず 2.4048/1.8412 = 1.306 対1です。
遮断周波数より上
とすると、位相定数は 、管内波長は 、位相速度は 、群速度は です。波動インピーダンスはTEモードで 、TMモードで です。ここで です。誘電体による減衰は です。管壁による損失は、、 として、TEモードでは次のようになります:
これはTE₁₁に対するPozarの式3.133です。TMモードでは です。 では括弧内のTE項が だけになるため、TE₀₁の管壁損失は周波数が上がるにつれて下がり続けます。
遮断周波数より下
遮断周波数より下では、モードは伝搬しません。その電磁界は として のように減衰し、計算ツールはこの減衰をdB/mで表示します。通気口が低い周波数を遮断できるのは、遮断周波数以下の短い導波管として働くからです。
適用範囲
導波管は1種類の均質な材料で満たされた完全な円柱とし、モード添字は n = 0〜5、m = 1〜5 の範囲です。損失の式は摂動法によるもので、表皮深さが半径よりはるかに小さい良導体と、小さな誘電正接を前提としています。また、β がゼロに近づく遮断周波数のごく近くでは精度が落ちます。誘電正接が0.1を超える場合、または表皮深さが半径の1%を超える場合は、警告付きで表示されます。
計算例
問題: 内半径10 mmの空気充填の銅製円形導波管で、10 GHzの信号を伝送します。単一モードかどうか、管内波長と損失はいくらか、次のモードはどれだけ強く遮断されるかを求めます。
ステップ1 - 遮断周波数: f_c(TE₁₁) = 1.8412 × 299792458 / (2π × 0.010) = 8.785 GHz f_c(TM₀₁) = 2.4048 × 299792458 / (2π × 0.010) = 11.474 GHz 10 GHzは単一モード帯域(8.785〜11.474 GHz)の中にあります。
ステップ2 - TE₁₁の位相定数: k = 2π × 10e9 / 299792458 = 209.58 rad/m k_c = 1.8412 / 0.010 = 184.12 rad/m β = √(209.58² − 184.12²) = 100.13 rad/m
ステップ3 - 管内波長: λ_g = 2π / 100.13 = 62.75 mm(自由空間では29.98 mm)
ステップ4 - 速度: v_p = 2.093 c, v_g = 0.478 c
ステップ5 - 波動インピーダンス: Z_TE = 209.58 × 376.73 / 100.13 = 788.5 Ω
ステップ6 - 管壁損失(銅、58.13 MS/m): α_c = 0.1497 dB/m なので、1 mでは0.15 dB
ステップ7 - 10 GHzでのTM₀₁: 遮断周波数11.474 GHzより下なので、1024.3 dB/mで減衰し、最初の10 mmで約10 dB減衰します。
30 GHzでは同じ導波管がオーバーモード(複数のモードが伝搬する状態)になりますが、そのTE₀₁モードの損失はわずか0.0487 dB/mで、同じ周波数でのTE₁₁の0.0549 dB/mより小さくなります。
実践的なヒント
- ✓動作周波数は単一モード帯域の十分内側に置いてください。TE₁₁の遮断周波数付近では損失が急増し、TM₀₁の遮断周波数を超えると2つ目のモードが伝搬し得ます。
- ✓導波管に誘電体を充填すると、すべての遮断周波数が √εr 分の1に下がります。これにより、誘電損失と引き換えに、同じ帯域に対する導波管を小型化できます。
- ✓ミリ波帯で長距離を低損失で伝送する場合、TE₀₁で伝送する大口径の導波管は周波数とともに管壁損失が下がりますが、他のモードを排除するためのモードフィルタが必要です。
- ✓遮断周波数以下で使う導波管は、簡単なハイパスフィルタやシールド付き通気口になります。その減衰量は、エバネッセント減衰の値に長さを掛けたものです。
よくある間違い
- ✗遮断周波数の式に直径を入れる。式に入れるのは内半径です。直径を入れると、すべての遮断周波数が半分の値になります。
- ✗単一モード帯域が方形導波管と同じくらい広いと考える。円形導波管の単一モード帯域はTE₁₁の遮断周波数からTM₀₁の遮断周波数までしかなく、比は1.306対1です。
- ✗円形導波管ではTE₁₁の偏波が固定されていないことを忘れる。わずかな楕円変形や曲がりによって、偏波が回転したり、2つの偏波に分かれたりします。
- ✗遮断周波数ちょうどで減衰の式をそのまま信用する。β がゼロに近づくと式の値は際限なく大きくなるため、遮断周波数のごく近くでは厳密な方法で損失を計算する必要があります。
- ✗TE₀ₘモードに、x = 0 にある J′₀ の零点を使う。TE₀ₘモードはゼロ以外の根を使うため、TE₀₁はTM₁₁と同じ根3.8317を使い、2つのモードは同じ遮断周波数をもちます。
よくある質問
方法論と参考文献
参考文献
- Microwave Engineering, 4th ed. — David M. Pozar (2012), §3.4, pp. 121–130 — circular waveguide TE and TM modes, Tables 3.3–3.5, Eq. (3.133) and Example 3.2; Appendices F and G for conductivities and loss tangents
- NIST Digital Library of Mathematical Functions — F. W. J. Olver et al., eds., Release 1.2.8 (2026-09-15), §10.21 — zeros of Bessel functions and their derivatives リンク
Reproduces Pozar's Example 3.2 (12.19 and 15.92 GHz; at 14 GHz β = 208.0 m⁻¹ and 2.07 dB/m) within the 0.07% his c = 3×10⁸ m/s explains; the TM₀₁/TE₁₁ ratio is 1.3061 for any radius or filling, and the attenuation formulas agree with a numerical integration of the wall loss.
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